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トヨタのAA型種類株はCFOはどうみるか

【CFOということで発行体の視点で考えてみます】

トヨタが「AA型種類株」を発行するということで、巷ではこの種類株が買いなのかどうかの議論が盛り上がっています。

買い手サイドからの議論は良く行われていますが、それに比べ発行体視点での議論というのはいまいち深いところまで話されている気がしませんので、本日はCFO目線からのこのAA型種類株の評価というのをしてみたいと思います。

結論からすると、私はこの種類株は非常によい仕組みのものになっているので好きです。
ぜひ他の上場会社にも導入を検討していただきたいと思っています。

AA型



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金庫株(自己株式)の活用、最終的な使い道の考え方

【ファナックの事例から】


前回のエントリー「ファナックの自社株買いから考える金庫株の消却に関する間違った議論」で、ファナックの金庫株の消却の事例を取り上げました。

近年、日本企業でも株主還元、ROEの改善等が叫ばれるようになり、自社株買いを行う企業が非常に増えました。
しかし、自社株買いで取得した金庫株の使い道については、いまいち議論が行われておらず、大企業であっても金庫株の使い道を持て余し、単に保有し続けているという事例が多いように思われます。

そこで今回は、金庫株の合理的な使い道について解説したいともいます。

金庫


【まずはファナックの事例を見てみましょう】


ファナックの金庫株9,200億円の消却という見出しを見ると、凄い判断をしたなと思うかもしれません。
ですが、ファナックの状況を見ると消却という選択肢しかありませんし、もっと早いタイミングでこのような判断をしてよかったのではないかと思います。

まずはファナックの状況というのを見てみましょう。

ファナックは工作機械およびその制御装置、産業用ロボットなどを製造するメーカーです。
世界のロボット市場のシェア18%を占め、アップルのiPhoneの製造にも用いられていて、売り上げを順調に伸ばしています。

2015年3月期の業績予想では、売上高6882億円、営業利益2680億円、純利益1851億円。営業利益率が40%近くと非常に高収益企業です。

財務状況としても、現預金約1兆円、時価総額で6.5兆円、保有していた金庫株の総額は1.2兆円という状況でした。

直近の設備投資として栃木に研究施設1300億円を建設しましたが、それ以外に大きな設備投資というのは見受けられません。

業績は好調で毎年Cashが積み増されている状況で、現預金1兆円、金庫株1.2兆円というのは、ファナックの今後の設備投資や高い配当性向(60%~80%)を勘案しても内部留保し過ぎと言えます。

また、ファナックが18%もの金庫株を持つにいたった経緯ですが、ファナックはもともと富士通の関連会社として設立され、富士通及び富士電機が50%程度の株を保有していました。

その後、富士通がファナック株式の売却を行う方針となり、ファナックが自己株式の取得という形で親会社の株式の売却の受け皿となっていました。

このような経緯からも分かるように、ファナックは財務戦略的に自己株式を取得していたというよりは、浮動株が増えるのを嫌い自己株式の取得を行い、できる限り気心の知れた株主で保有比率を高める方向での資本政策を考えていたと言えます。

このような根本的な資本政策の考えからして、再度自己株を市場に出すような使い方はファナックとしてはもともと考えていなかったと思われます。
更に言えば、自己株式の取得の経緯からして、浮動株が増えるのが嫌で自己株式の取得を行っていったら18%超の株式を保有するまでになってその使い道に困っていた、というのが実情のように考えられます。

そして、このようなタイミングで外部からの圧力があったため、ファナックは今回このような判断にいたったと考えられます。

その外部からの圧力というのが、サードポイントという日本でも近年活動が活発になってきているアクティビストファンドがファナック株を保有し、金庫株の消却の要求をしていました。

サードポイントは、Sonyに対しても活発な活動をしていましたので知っている方も多いかと思います。
third point


まとめると、ファナックの事例は、様々な経緯のなか自己株式の取得を行ってきたが、金庫株保有の明確な目的はなく、かといって消却するのももったいない(いつか何かに使えるかも)という漠然とした考えでいたところに、サードポイントが消却の要求をしてきたため、よくよく考えればこんなに持っている必要もないし、消却しようという判断になったと考えられます。

日本を代表する企業でこんな感じではないだろうかと思うかもしれませんが、私が大企業のCFOや財務担当者と話していても金庫株の使い道というのを戦略的に考えている企業は少なく、このような会社が日本企業の大多数というのが実態であると思われます。

それでは金庫株のあるべき使い道とはどのようなものでしょうか?


【金庫株の使い道】


ファナックの事例からも見て分かるように、日本企業は自社株買いは積極的に行いますが、取得した株(金庫株)の使い道についてはまだ整理された考え方がなく、外部からの圧力がなければそのまま放置されているということが非常に多い状況です。

では、金庫株の使い道として最適な方法とはどのようなものでしょうか?

まず、金庫株の使い道として実務上考えられるのは以下のものです。
①M&Aへの活用(株式交換等)
②資金調達の際に新株発行の代わりに使う
③役員・従業員向けSO制度の行使対価として付与する(ESOP等も含む)
④消却

このうち会社側にとって使い道として有用なものと考えられるのは、①のM&Aの際に使う場合だけです。

②の資金調達の際に新株発行の代わりに金庫株を使うという方法もメリットがあるように考える方もいるかもしれませんが、新株を発行する場合との違いは金庫株を処分したことによる資本剰余金の増加(自己株式の減額)ということだけです。
会社法上、自己株式の処分も新株発行も同じ行為と整理されており、必要な手続きや適用される法律は同じです。

③のSOの行使対価として使う場合も、基本的に新株発行の場合と差異はありません。

また、①のM&Aに使う場合は有用と言いましたが、株式交換は現金対価の場合に比べ手続きも複雑であり、相手方が現金による対価を求めるケースも多く、実際にM&Aに金庫株が使えるケースというのは限定されます。

このようなことから考えると、金庫株の使い道としては消去法的に消却かと思われるかもしれませんが、そうではありません。

私が金庫株の使い道として最も良い方法というのは、”戦略的な放置”です。

その理由は、金庫株の消却は1株当たり利益の向上等の効果は特にないためです。
日本の資料等ですと誤って記載されているものをよく見かけますが、通常アナリストや機関投資家がPERやWACC指標の計算をする場合、金庫株はその分控除して計算するが一般的です。
その意味で、消却をするかしないかというのは投資家から見る企業価値等に影響は与えません。

企業価値、ひいては投資家の投資判断になんの影響も与えないのに無理に消却を行う必要はありません。

また、自己株式の取得をした時点で、その自己株をM&Aやファイナンスで●●株使おうと明確に考えている企業はほとんどないと思いまが、もし万が一使う場面が出てきたときに消却してしまっていたら後悔することとなります。
消却はいつでもできますが、消却した金庫株を復活させることはできません。

このようなことから、金庫株については戦略的に放置するというのが最も良いと考えられます。

このような説明をすると、「金庫株は再度市場に出る可能性があり、その希薄化懸念分株価を押し下げる。実際、サードポイントは消却の要求をしているし、消却すること自体が投資家からの評価を上げるのではないか」といった反対意見を持たれる方もいるかと思います。

しかし、よく考えてみてください。金庫株を処分し再度市場に流通させようとした場合、その手続きは新株発行と同じですので、金庫株があるから希薄化の懸念があるというのは論理的なな考え方ではありません。

上場企業であれば、市場から資金を調達することは金庫株の有無にかかわらず常に考えられますので、この考え方は誤りです。

また、PER等の指標が改善するという点ですが、通常指標への影響というのは自社株買いをした際に織り込むのが理論的です。
金庫株は会社が保有することになりますが、会社を保有しているのは株主です。その意味で金庫株の経済的価値は間接的に株主に帰属しています。

このようなことから私は金庫株の使い道としては、「戦略的な放置」がよいと考えています。
そして、実際に使うタイミングが出てくれば金庫株を使えばいいのです。

ここで”戦略的”と言っているのは、意思を持って放置するという点が重要なためです。

ファナックの事例で見たように、明確な金庫株の保有目的がない場合、外部からの圧力が掛った際にその圧力に屈する形で消却等の言われるがままの処理をしてしまいます。

この点、明確な意思を持って保有していれば、外部から何を言われても会社の方針として硬い意思を貫くことができます。

その意味で”戦略的に”放置することが重要なのです。

以上が私が考える金庫株の使い道です。

自己株取得の時点で明確な使い道を持っていない企業がほとんどと思いますので、このような考えを参考にしていただければと思います。


【編集後記】


私も以前金庫株を何かしら使いたと思い様々検討しましたが、実際活用するのは非常に難しいかと思います。
私の考えも未熟な点も多いかと思いますので、何かご指摘や質問等あれば気軽にコメント又はメッセージを頂ければと思います。

テーマ : 経営者
ジャンル : ビジネス

ファナックの自社株買いから考える金庫株の消却に関する間違った議論

【ファナックが9,200億円分の自社株を消却】


2015/5/30の日経新聞の記事で「ファナック、自社株9200億円分を消却」という記事がありました。
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO87485010Q5A530C1EA1000/

発行済み株式の18%保有していた自社株について、5%の割合になるくらいまで消却を行うというものです。


ファナック


最近は、ROEの改善、株主還元、業績好調という状況を背景に、自社株買いを行う会社が非常に多くなってきています。
株主還元施策として自社株買いは既に広く知れわたった手法となりましたが、取得した自社株の活用という点ではまだ本当の意味で理解されている経営者・CFOの方が少ないのかと思います。

今回のファナックの自己株式(以下、分かりやすいように「金庫株」という)の消却に関連して、一部の報道では、この消却により株主に帰属する1株上がり利益が上がるといったことや、市場への株式の放出懸念がなくなるといったことが言われています。

しかし、この点については私は大きな違和感を感じます。

そこで今回は金庫株の消却の考え方について解説したいと思います。



【おまけ:金庫株の消却に関する間違った議論】


よく日本での金庫株の議論として、自己株式の取得をした段階では実際にはまだ発行済みの株式として残っているためPER等の指標の改善にはならず、消却した段階で初めてPER等の指標が改善される、といった内容のものがあります。

私はこの点に非常に違和感を感じています。
金庫株は基本的には会社が保有するものですが、その会社の実質的な保有者は株主と考えられますので、金庫株の保有者も間接的には株主と考えられます。

その意味で、金庫株に係る経済価値は間接的に株主に帰属しますので、消却しょうがしまいが株主に帰属する利益の大きさというのは変わりません。

米国では州毎に自社株取得の手続きや会計処理について細かな違いがありますが、米系の金融機関では通常時価総額の計算や、WACCの計算、その他の経営指標の計算の際に金庫株は発行済み株式数から除外して考えます。

日本の専門家と呼ばれる方の中には、金庫株が再度市場に流通する可能性があり(希薄化する可能性があり)、償却しない限りPER等の指標は改善しないと仰る方もいます。

しかし、よく考えてみてください。

金庫株を市場に再度流通させる場合は、会社法上新株発行と同じ扱いとなります。
そのため、金庫株の処分の可能性があるから指標の改善はないと言っていることはナンセンスです。

ですので、自社株買いをした時点で1株当たりの価値は変動し、消却するかしないかは財務指標に影響は与えません。

また、金庫株であっても市場に再度流通させる場合は、新株発行と同じ手続きが必要となりますので、この金庫株があることで希薄化の懸念があり株価を押し下げる効果があるというのは、全く理論的ではありません。

金融系の概念や用語はは米国から入ってきたものがほとんどです。
そのため日本では一部間違って考えられているものや、米国でその後修正された概念等が伝わっていなかったりします。


ウォール


皆さんは本当の意味で考える力を付けて、日本で行われている間違った議論には騙されないようにしてください。


【編集後記】
ファナックさんの名前は以前から知っていましたが、詳細についてはこのエントリーを書くまで知りませんでした。
本社が富士山の麓にあったり、ほとんどIR的な活動をしていなかったり、とてもユニークな会社で調べているうちにどんどん興味が湧いてきました。

東京にある企業はどこも紋切型的に同じようなIR、資本政策をしていますが、このように独自の考え方で企業活動を行うというのも、今の時代は逆にありなのかもしれませんね。

日本企業のあるべき株主還元策について考えてみる

【最近は株主還元策を求める株主の声が大きくなってきている】


上場企業の経営者、CFOの方のよくぶつかる問題として、”株主還元”をどうするかという問題があります。

広く投資家から資金を集めて事業を行っている以上、配当を行い株主還元を行うべき、というのが教科書的な考え方です。

しかし、実際に会社を経営している立場としては、将来の投資やもし何か危機的状況が発生した場合に備えて資金をできるだけ手元に残しておきたいと思うところです。

日本の企業を取り巻く環境としては、年々株主から配当を求める声が大きくなってきている状況です。
株主総会では、多くの企業で株主から配当の要求や質問というものが多くなされますし、Sony等のグローバル企業では米系のアクティビストから余剰資産の処分、そしてその処分した資金で配当、という要求が実際に行われています。

このような状況の中、日本の上場企業のあるべき株主還元施策とはどのようなものでしょうか?
今回はこの株主還元施策の考え方について解説したいと思います。

配当


【株主還元策の種類】


まず、どの方でも思いつく株主還元策としては、”配当”と”自社株買い”があると思います。
おまけ的な位置づけとしては”株主優待”というものもあります。

上記の株主還元策はどの方も直ぐに思いつくものだと思いますが、経営者・CFOの方に覚えておいていただきたいことは、「企業価値を向上させ(株価を上昇させ)、株主にキャピタルゲインを与えるということも株主還元である」ということです。

株を購入する投資家は、その株を購入することで将来的に経済的なメリットを得られると期待するためおカネを払って株を購入します。
冒頭の部分で「広く投資家から資金を集めて事業を行っている以上、配当を行い株主還元を行うべき、というのが教科書的な考え方」と記載しましたが、私はこの考え方は必ずしも正しいとは思っていません。

例えば、未上場株に投資をする投資家は、配当を求めることはよほどのことがない限りしません。
それは、投資家が配当による還元ではなく、キャピタルゲインによる還元を期待しているからです。配当を行うことで企業の成長を阻害するおそれがあれば、投資家は無理な配当は求めず将来のキャピタルゲインまで我慢します。


capital gain


つまり、株主は将来のキャピタルゲインによる還元が期待できる状況であれば、無理に配当や自社株買いを求めたりはしないのです。
その意味で、キャピタルゲイン(あるいはキャピタルゲインの期待)は株主還元の1つの方法であると考えられます。

実際、日本よりもはるかにアクティビストの活動が活発なアメリカにおいて、Amazonは収益のほとんどを研究開発に使い、利益も出していませんし配当も行っていません。
それでもAmazonがマーケットから高い評価を受け、投資家がAmazonの株を買いたいと思うのは、株を保有していればキャピタルゲインによって経済的メリットが得られると期待するためです。

このようにキャピタルゲインも株主還元策の1つであると認識するで、株主還元策を検討する際の幅が大きく広がることになります。




【日本企業のあるべき株主還元策】


日本企業は、ある程度の余裕資金ができ、株主からの配当を求める声が大きくなってくると安易に配当を行ってしまいがちです。

ですが安易に配当は行うべきではありません。

配当は1度開始してしまうと止めにくい施策です。止めたタイミングでの株価へのマイナスインパクトも非常に大きくなりますし、通常配当を止める場合は業績も悪化しているタイミングですので、株価が底なしに下がる状態になってしまいます。

では、あるべき株主還元策というものはいったいどのようなものでしょうか?

同業他社の還元率、最適なWACCから計算、目標ROEからの計算等々、株主還元に対しては様々なアプローチがあると思いますが、私は考え方のベースは、会社の成長ステージによって株主が求める期待リターンというのは異なるということを前提に、成長ステージ毎に採るべき株主還元策を変えるというのが1つの答えです。
life stage



会社のライフステージとしては、大きく分けると①黎明期、②成長期、③成熟期、④衰退期に分けることができます。
それぞれのライフステージにおける採るべき株主還元策は以下のように考えられます。

①黎明期

黎明期は創業からIPO前までといったイメージです。
この時期は事業資金も潤沢とは言えず、資金をできるだけ事業拡大のために使うべきですし、多少の余裕資金があっても将来の危機に備えて内部留保しておくべき時期です。
投資家もキャピタルゲインを目的に投資をしており、配当は期待していません。

その意味で①の時期の会社は、配当・自社株買いは全く考えずに事業拡大のための資金活用をひたすら考えるべきです。
企業を成長させ、将来的なキャピタルゲインの期待を高めることが株主還元となります。


②成長期

成長期の時期は、IPO直前くらいから事業が急成長している時期のイメージです。
この時期の株主還元策の考えというのが最も難しいかと思います。

事業が拡大しており、一定の利益が出てきているため配当の原資等は確保されています。
その一方で、余剰資金を使って事業拡大のための再投資をしていくと言っても、なかなか投資先や資金の使い道とうのは見つからないものです。

このような場合に、余剰資金が積み増されていき、株主からも「それだけ資金があるでのあれば配当をしろ」といった声が大きくなってきます。
ここで安易に配当を始めてしまうと、後々大変なことになりますので、慎重な検討が必要です。

考え方としては、「これからもイノベーティブに会社を成長させていくのだ」という意思が経営者にあり実際僅かでも成長している、あるいは成長の余地があるのであれば、その間は配当・自社株買いはすべきでないと私は考えます。

イノベーションを起こして爆発的に成長させる、あるいは今までの成長を維持するのであれば、資金は必ず必要になります。資金が必要になったタイミングで市場から調達するという方法もありますが、このような意思が会社にあるのであれば、資金を留保するというのが最も良いと思います。

但し、むやみに資金を残しても株主からの還元要求の声は強まるばかりです。
このような場合、株主に対してはストーリーを持って、資金を留保する理由を語らなければなりません。

「この留保している資金を使って●●分野の新規事業を作り、3年後には●●億円の売上の規模まで拡大する。そのために研究開発に●●億円、マーケティングに●●億円必要なので今は配当はしません。」等々の企業の成長とそのための資金使途を示したストーリーを説明すれば、株主はむやみに配当を求めたりはしなくなります。

これは上記で述べたように、キャピタルゲイン(あるいはキャピタルゲインの期待を持たせること)も株主還元の1つの方法ですので、企業成長のビジョンとその資金使途を明示すれば株主の期待収益へ応えるということになるのです。

多少余談になりますが、プロの投資家もこのような考え方には賛同しています。

2014年から2015年にかけて自社株買いを行う企業が世界的に増えています。
そのような背景から、世界最大の資産運用会社、米ブラックロックのローレンス・フィンク最高経営責任者(CEO)も「安易な株主還元をやめて会社の長期的な成長に注力すべきだ」とする書簡を米主要企業500社のCEOに送っています。

フィンク氏は現状について「株主還元の名の下に実施される配当や自社株買いが目に余る」と指摘しています。そのうえで「アクティビストの圧力が企業の長期的価値の創造を損なっている」と言っており、さらに「技術革新や技能のある従業員への投資など企業に不可欠の投資がないがしろにされてしまう」とも懸念を表明しています。

このように株主の短期的な利益要求にこたえる形で株主還元を行うことは、一部の長期で株を保有する投資家からは批判もされています。

株主還元を考える際には、会社の長期的な成長の意思やその機会を勘案したうえで慎重に決定すべきです。


③成熟期

どの企業も常に事業を拡大していこうという気持ちで事業を運営していますが、どうしても成長が横ばいになり思うように事業を拡大していけなくなる時期を迎えてしまう企業が出てきます。

このような成熟期を迎えた会社というのは、株主に対してキャピタルゲインの期待を抱かせることがもはやできなくなっています。

そしてこのような会社は、新規事業の開発等のための設備投資や研究開発というのは、それほど大きな支出ではなくなってきており、資金が一定内部に留保されている状況です。

このような会社は、成長の可能性が小さくなってきているためマーケットからの評価も下がってきています。その意味で、配当や自社株買いを行うことで、株価収益率を向上させ株価を上昇、維持するという戦略が必要になってきます。

また財務面に関しても、上記のようにこのような会社は一定内部留保が積み増されていっている一方で、新規投資の機会が減少しているため、配当や自社株買いを行わない場合、ROE等の効率性や投資家の収益性を見る指標がどんどん悪化します。
その意味でも、このような成熟期に入った会社は、配当や自社株買いによる株主還元を考えるべき時になっています。

このような会社の検討の順番ですが、まずは自社株買いによる株主還元を検討すべきです。
自社株買いは毎年定期的に行うものではありませんので、会社の財務状況に応じてフレキシブルに行えるという点で配当よりも行いやすい施策です。

また、この自社株買いをやる際に、財務戦略と一緒に開示を行うとより効果的です。
日本の企業は自社株買いを単発的に実施して、継続的な実施のストーリーというものは投資家に示しません。しかし、投資家からすれば継続的な財務施策の方がより評価は高くなります。

具体的には、自社株買いを行う際に今後の財務戦略として、「現預金●●億円以上を保有してりる部分については株主還元の対象とする」や「ROE●●%を目標とし、その実現のため余剰資金については毎期見直す」といった内容を開示すると、投資家からすれば自社株買いが単発的な事象ではなく、今後も継続的に行われるというメッセージとして受け取られ、非常に高い評価を受けやすくなります。

自社株買いを行い、それでもなお使い切れないような余剰資金がある場合には、配当を検討するとう順番での検討が成熟期の会社にとってはよいかと思います。


④衰退期

衰退期というのは、営業キャッシュフローもマイナスになってきており、資金繰りが悪化している状況の会社です。

このような会社は、配当等を行い資金を外部に流出させるような余裕はありませんので、配当や自社株買いは行わずに、できるだけ資金を会社の延命のために使うというのが実務上の対応化と思います。

【まとめ】


以上のように、会社の置かれているそれぞれのステージによって株主が求める期待リターンは異なりますので、それぞれの状況に応じて株主還元策を考えるというのがよいと考えています。

黎明期・成長期において株主は、キャピタルゲインによるリターンを求めています。
そのため会社は、配当や自社株買いによる還元は考えずに、資金を事業拡大のために使いできるだけ企業価値を増大させるということが株主からも求められていることです。

成熟期に入った企業については、株主は爆発的な成長によるキャピタルゲインというのはそれほど望んではおらず、配当や自社株買いによるリターンというものを期待しています。
そのため会社としても、財務状況等を勘案したうえで自社株買い、配当の検討が必要になります。

衰退期に入った企業については、株主はもはやリターンを期待していないため基本的には株を保有したいとは思いません。そのため、このような企業はマーケットから退場を余儀なくされるといったことになります。

皆様が株主還元策を検討する際にこのような考えを参考にしていただければと思います。


【編集後記】
アメリカも日本も最近は行き過ぎた還元が行われているように感じます。
Amazonのレベルまではいかなくても、常に企業を成長させるため研究開発や設備投資にベットしていくといことが最終的には株主へのメリットにつながると思います。

どうしても声の大きい株主の意見等言うのは耳に届きがちですが、株主還元については冷静な判断が必要かと思います。

テーマ : ビジネス
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ROEに対する取組み -本当の意味でのROE重視を考える-

【ROEブーム】


ROEを重視した経営というものが、ある種”ブーム”になっています。

私が”ブーム”という表現をしたのは、多くの企業がROEの重視ということで、3年後にはROE●●%といったような経営目標を掲げていますが、本当の意味でROEを理解し、会社の事業目標や戦略と整合した形でROEを重視しているように感じられないためです。

JPX400銘柄の選定にはROEが1つの重要指標とされ、コーポレートガバナンスコードも策定され、日本政府もROE重視経営を後押ししています。そのような雰囲気が、経営者やCFOのマインドを「とりあえずROEを重視しなくては」という気持ちにさせ、ROEブームを醸成しているのではないかと思います。

CFO向けのこのブログを読んでくださっている方であれば、ROE自体の重要性を理解されている方が大半だとは思いますが、会社がなぜROEを重視しなければならないのか、このROEとど会社として付き合うべきか本当の意味で理解されている方はもしかするとそれほど多くはないかもしれません。

CFOは、コーポレートガバナンスコードの適用や、投資家との対話の際に中心的な役割を担うことになります。
ROEの本当の意味を考えることは、今後のコーポレートガバナンスコードのへの対応、IR活動を行ううえで非常に重要なことですので、今回はこのROEの本当の意味、ROEという指標への対応ということを考えてみたいと思います。

ROE.jpg


【ROEの正体】



野村証券の用語解説サイトでは、ROEは以下のように定義されています。

【ROE(あーるおーいー)】
Return On Equityの略称で和訳は自己資本利益率。企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合。
計算式はROE=当期純利益÷自己資本またはROE=EPS(一株当たり利益)÷BPS(一株当たり純資産)。

また、参考までに各国の平均ROEは以下の通りです。
日本企業の平均ROE:8%
ドイツ企業の平均ROE:12%
アメリカ企業の平均ROE:15%
(出典:ベル投資研究所調べ)


今更解説するまでもありませんが、ROEの意味としては計算式を見て分かる通り、「株主が投資した資金に対して会社がどれだけの収益を生み出せているか」ということを示している経営指標です。

投資家からすれば、ROEは投下した資金に対する会社の収益率を端的に示す指標であり、その収益率が配当やキャピタルゲインの源泉となるため、投資をする際の投資利回り計算の重要な指標の1つとしています。

しかし、よく考えてみてください。上記の計算式を見ると、ROEの計算の分母となる純資産は簿価で計算されます。
でも投資家は簿価と同じ価格で株を買えるわけではなく、市場から時価で株を買うことになります。

株主の持分に対する投資収益率を表すことになる。
そのため、経営者が株主に対して果たすべき責務を表した指標と見ることができる。また、それは株主に帰属する配当可能利益の源泉となるものであり、配当能力を測定する指標として使われる。自己資本収益率は株式の投資尺度としても重要である

ROEはあくまで投資家からの評価指標
時価ベースのROEを使う
ROEの指標だけを重視しても意味がない
WACCも下げるようにする
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